インカム越しに、心ない言葉が飛んでくる。
「お客様は神様」なんて言葉は、とっくの昔に終わったはずなのに——それでも今日も、誰かがサンドバッグになっている。
ニュースにはならない、でも確かにある、あの重苦しさ。あなたも、感じていませんか?
札幌のコールセンターで働く40代〜60代の皆さん。
生活のために、時に理不尽な言葉にも耐えながら、毎日感情を削って働いている。そんな皆さんに、今日はちゃんと向き合いたいと思います。
先日、厚生労働省が「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を公表しました。国が描く「理想の対応」と、私たちが肌で感じている「現場のリアル」——その間には、どれほどの距離があるのでしょうか。
今回は、そのギャップを一緒に確かめながら、現場で心を守るための、ちょっとしたヒントを探していきます。
厚労省の理想と札幌の現場の「溝」を、正直に見てみる
厚労省のマニュアルには、働く人を守るための「理想」が丁寧に書かれています。でも、現場でそれが機能しているかというと……正直、首をかしげてしまうことも多いですよね。
国の理想① 「悪質なクレームは組織で対応し、毅然と電話を切る」
マニュアルには、カスハラに対しては組織として毅然と対応し、必要なら電話を切ることも明記されています。オペレーター一人に背負わせない、という大切な考え方です。
現場のリアル①「自分から切るのはNG」という空気と、静かな孤独
でも実際は、「お客様が切るまで待つのが当たり前」「こちらから電話を切るなんてもってのほか」という、はっきり言葉にはされないけれど確かに漂っている空気、ありますよね。
「これってハラスメントじゃないかな」と感じても、一回り以上年下のSV(スーパーバイザー)に声をかけるのをためらってしまう。「こんなことで頼んでいいのかな」「忙しそうだし、私が我慢すればいいか」——そう思って、一人で飲み込んでしまう。
その遠慮が、じわじわと心を蝕んでいくのです。
世代間の距離感と、非正規という立場。この二つが重なったとき、「頼みにくさ」は倍になります。あなたが弱いんじゃない。そういう構造になってしまっているのです。
国の理想② 「従業員のメンタルヘルスをしっかり守る」
カスハラによって精神的なダメージを受けないよう、企業にはケアが求められています。これも、大切な指針です。
現場のリアル②「辞めたくても辞められない」派遣社員の、正直な懐事情
札幌の最低賃金は1,075円に上がりました。でも、市内の家賃の高騰、冬の暖房費のこと、生活費の積み重ねを考えると、「上がった」という実感は、なかなか届いてこないのが正直なところではないでしょうか。
「辞めたい」と思っても、次の仕事の保証はない。年齢のことを考えると、正社員への道も遠く感じる。だから、メンタルが限界に近くても、「もう少し頑張ろう」と自分に言い聞かせて続けてしまう。
頭では「心を守らなきゃ」とわかっている。でも、生活があるから動けない。そのはざまで、じっと耐えている人が、きっとたくさんいる。
様々な仕事を渡り歩いてきた「大人派遣」だからこそ、感じること
私たちは、色々な職場で経験を積んできた「大人派遣」です。だからこそ、コールセンターという環境の特殊さが、余計に際立って感じられることがあります。
- 顔が見えない電話の「闇」
対面なら絶対に言わないような言葉を、電話越しだと平気で浴びせてくる人がいます。相手の顔が見えない分、攻撃性はむしろ増し、言葉はどんどん刃になっていく。その「闇」を、私たちは毎日のように体感しています。 - 研修の嵐と、感情労働の重さ
新しい派遣先では、専門用語だらけの研修についていくだけで精一杯です。それでも笑声(えごえ)を保ち、感情を押し殺して丁寧に対応し続けなければならない。経験豊富な私たちにとっても、これは決して軽い負担ではありません。 - 「自分のせいかも」から、そろそろ降りる
「もっと上手い言い方があったかな」「私の対応がよくなかったのかも」——自分を責める気持ち、すごくよくわかります。でも、少し立ち止まって考えてみてください。国が「ハラスメント」と明確に定義しているということは、それはあなた個人の問題ではないのです。堂々と線を引いていい。そのマインドチェンジが、心を守る最初の一歩になります。
現場ですぐできる!「大人派遣」のスルー力とメンタル防衛術
では、この厳しい現場で、どうやって心を守っていけばいいのでしょうか。経験を積んできた私たちだからこそ磨いてきた「スルー力」と、今日からできるメンタル防衛術をご紹介します。
① クレームの後は、インカムを置いて3分リセット
感情を揺さぶられた後、すぐ次の電話に出るのは禁物です。インカムをそっと外して、ゆっくり深呼吸を3回。席を立たなくていい。目を閉じて、頭の中を空っぽにする時間を3分だけ作りましょう。
たった3分でも、脳はちゃんとリセットされます。「また頑張れるかも」という感覚が、少しずつ戻ってきます。
② 「ぼっち休憩」は、立派な自己防衛
休憩時間に、無理に誰かと話す必要はまったくありません。休憩室の隅でスマホをながめるもよし、車通勤なら、車の中で目を閉じるもよし。職場の人間関係からも、意識的にシャットアウトする時間を作ることが、長く働き続けるための知恵です。「孤独な休憩」ではなく、「自分を守るための休憩」と、ぜひ捉え直してみてください。
③ 「いつでも辞められる」という、静かな覚悟
これは、逃げではありません。「辞めようと思えば辞められる」という感覚を持つだけで、心の余白が少し生まれます。年下の正社員からのタメ口、理不尽な指示、小さなモヤモヤ——全部を引き受けなくていい。
あなたは、自分のスキルと時間を持ち寄っているプロフェッショナルです。必要以上に自分を小さくする必要は、どこにもありません。
まとめ:あなたは、一人じゃない
カスハラに直面しながら、それでも今日も働いている皆さん。本当に、お疲れ様です。
厚労省のマニュアルと現場のリアルの間には、まだ大きな溝があります。でも、その溝をすぐに埋められなくても、自分の意識と小さな行動で、心を守ることはできます。
「お客様は神様」という幻想は、もう終わりにしましょう。ハラスメントは、あなたの個人的な失敗ではなく、社会全体で向き合うべき問題です。あなたが感じた理不尽さは、本物です。
今日からできる小さな工夫が、明日の自分を少し楽にしてくれますように。
そして、もし本当に苦しくなったときは——一人で抱え込まないでください。信頼できる誰かに話すこと、もしくは新しい道を探すことも、立派な「自分を守る選択」です。
あなたの心と健康が、何より大切なのですから。



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