「今の窓口、もうすぐ丸3年になるけど……来月から、私はどうなるんだろう」
札幌のコールセンターで長く働いていると、必ず一度は、この言葉が胸の中でつぶやかれる瞬間があります。
今日もお疲れ様です。直広です。
派遣社員には、労働者派遣法という法律によって「同じ事業所(部署)で働けるのは、最長3年まで」というルールが定められています。いわゆる「3年ルール」です。
法律の建前としては、「3年経ったら、派遣先はその人を正社員として直接雇いなさい」という、労働者を守るための制度です。
でも現実は、そんなに単純ではありません。
特に40代・50代・60代の私たちが、3年経ったからといって突然コールセンターの正社員(管理職)に登用される——そんなケースは、正直なところ、ほとんど聞いたことがないと思います。
では、3年が来たら職を失い、真冬の札幌に放り出されるしかないのか。
実はそうではありません。
大手コールセンターが集まる札幌では、このルールに対して「ある現実的な運用」が、ごく自然に定着しているのです。
■ 現場でそっと使われている「部署異動」という選択肢
契約更新の面談のとき、派遣会社の担当者からこんな言葉がかかることがあります。
「直広さん、今の窓口は3年の期限が来るので、来月から隣のプロジェクトに移りませんか?」
一見すると、大きな変化に聞こえます。でも実際には、同じ会社の、同じビルの、同じフロア。
それでも、システム上の「部署名」や「担当するクライアント」が変われば、法律上は「新しい職場へ移った」とみなされ、そこからまた新たに3年のカウントがスタートします。
ニュースや法律の専門家のコラムでは、これを「直接雇用逃れの抜け道だ」と批判する声もあります。
でも実際に、毎日インカムをつけて働いている私たちの本音は、少し違う場所にあるのではないでしょうか。
■ 「正しさ」よりも、「今日も同じ場所に行けること」の安心感
世間は「派遣会社が正社員化を逃れている、かわいそうだ」と怒ります。
でも、私たち大人派遣にとって、この仕組みはむしろ、静かな救いになり得るものです。
考えてみてください。
40代・50代を過ぎてから、また一から履歴書を書き直して、証明写真を撮り直して、慣れない街のビルへ面接に出かける——そのエネルギーを。
それは若い頃とは比べものにならないほど、心も体も消耗させる作業です。
「部署異動というかたちで同じビルに居続ける」という選択は、そのしんどさをまるごと回避しながら、大切なものをすべて守り続けることができます。
- 通勤ルートを変えなくていい。
冬の札幌の通勤は、本当に過酷です。慣れた地下鉄の出口、歩き慣れた地下歩行空間。その「いつもの道」があることの安心感は、暮らしの土台そのものです。 - 休憩室も、お気に入りのランチも、そのまま。
電子レンジの位置、座り心地のいい椅子、いつもの昼食スポット。小さなことのようで、これを把握し直すストレスがゼロというのは、じわじわ効いてきます。 - 「はじめまして」を繰り返さなくていい。
隣のシマ(部署)に移っても、顔なじみの同僚、清掃の方、警備員さん——みんな同じです。50代を過ぎてから、また一から人間関係を作り直す消耗から解放されること。これは、精神的にとても大きなことだと、私は思っています。
■ なぜこれが「合法」なのか
札幌の大型コールセンターの多くは、ひとつのBPO企業が何十ものクライアントから業務を受託しています。
「通信キャリアの窓口」から「通販サイトの窓口」へ移れば、担当する業務も、使うマニュアルも、覚えるシステムも、ガラリと変わります。これは法律の観点からも「正当な部署異動」として認められており、れっきとしたキャリアチェンジです。
脱法でも、ずるでもない。
現行の制度の中で、正当に認められた選択肢のひとつです。
■ 「3年後もここにいる」ために、今できること
ただし、このスライド異動を実現するためには、私たち側にも少しだけ準備が要ります。
- 派遣会社の担当者に、早めに「本音」を伝えておく。
2年半を過ぎたあたりで、「正社員を目指しているわけではなく、今の環境がとても気に入っているので、3年後もこのビルで別の仕事を続けたい」と、素直に話しておきましょう。担当者は、あなたの希望を知らなければ動けません。 - 「穴を開けない」という、静かな信頼を積み上げる。
コールセンターが本当に手放したくない人は、スキルがずば抜けた人よりも、「この人は明日も必ず来てくれる」と信じられる人です。無遅刻・無欠勤。それだけで、あなたの価値は十分に伝わっています。派遣会社は、そういう人をみすみす手放しません。
■ まとめ
法律の「建前」に振り回されなくていい、と私は思っています。
世間が何と言おうと、「履歴書を書かずに、慣れた場所で、今日も同じように働けること」——それは、私たちの暮らしを支える、れっきとした価値です。
3年の壁を「恐怖の期限」にするか、「同じ場所で再スタートを切る切符」にするか。
その分かれ道は、この仕組みを知っているかどうか、ただそれだけです。
明日も、ヘッドセットをつけたら淡々と。
終わったら、いつもの地下街をゆっくり歩いて帰りましょう。
お疲れ様でした。



コメント